シャープがFoxconnに買収されました。最終合意まではまだ長そうですが…私も家電も作っている会社に勤めていましたので、日本ブランドの海外企業による買収は、考えさせられるものがあります。ファブレス企業が、総合家電メーカを買収してうまく使いこなせるかどうかはわかりませんが、とりあえずシャープのブランド名だけは残るようですね。事業ポートフォリオの偏りや、過剰な投資等いろいろと問題はあったのかと思いますが、ここ10数年でのあっという間の転落には、急激に変化する経営環境の厳しさを感じます。私も初めてのPCはシャープのX1(テレビが映るパソコンです)ケータイからスマホまでシャープの機種は割と好きで、現在はSBの303SH。そういえば、電子手帳やザウルスも4台ぐらい使いましたね。家電はあまり使いませんでしたが。
(Wikipediaより)
消えていく日本のブランド
オーディオ・AVでは「アイワ」「アカイ」「サンスイ」「デンオン」「AKAI」「ナカミチ」懐かしい名前ですが、無くなってしまいました。高校の時は、憧れたブランドもありましたし、大学の頃まではまだ製品があった気がします。そういえば、テクニクスは復活したそうですね。白物家電では「サンヨー」の洗濯機と冷蔵庫がハイアールになりました。私も以前の会社に入社した時は、ナショナル、ソニー、東芝等々、自社も含め日本の家電が世界を席巻していた時期でもありましたので、家電の事業部を希望していた同期も沢山いましたね。シャープだけでなくテレビ、パソコン、スマホ等デジタル家電の世界でも、日本メーカの苦戦は続いています。今回もシャープ再建案として東芝(プラス日立?)との家電事業合併の計画もあったようですが、合併しても輝きを取り戻せるかどうかはわかりません。白物家電は技術面でも成熟し、コモディティ化も進んでるので差別化がしにくい製品です。消費者も買い替え需要が殆どでしょう。そこそこの製品を各社横並びで出していれば、利幅は少なくても根強い一定の市場は確保できます。パッとした新製品が日本のメーカから出ないのも、硬直化したマーケティングが原因なのではないかと思います。ダイソンの掃除機やiRobotのルンバを購入する方は、掃除という機能に加え、製品の優れたデザインや、けなげに動き掃除を続ける姿に価値を見出しています。バルミューダの扇風機は久々に日本製品の良さを感じました。大手メーカの製品企画でのブレイクスルーも期待するところですが、家電事業は(財務上)お荷物になっていて現状維持が精いっぱいというのが実情でしょうね。
大学生の姪の話
正月に、実家で東京の大学に通う姪に会いましたが、彼女は自分のアパートにテレビが無いそうです。テレビを見る時間が無いほど、勉強とクラブとバイトに忙しいのでしょう。昔はお金が無くてテレビが買えませんでしたが、今の大学生は時間が無くてテレビがいらない生活になっているようです。PCかスマホで見てるのかと思えば、そもそもテレビ番組を見ないようです。たしかに最近の地上波番組は面白いものはないですし、ネット動画の方が魅力的なコンテンツがそろっているのかもしれません。ニュースや音楽はスマホで十分代替できるので支障はないようです。こういった若者のライフスタイルの変化で、既存のTV視聴機器の市場は、少子化と相まって縮小の一途になるのでしょう。プラズマから液晶、3Dテレビ、4Kと付加価値を付けてきたテレビですが、次は8Kになるようです。もはや一般の消費者が求める以上のスペックになりつつありますが、果たして技術革新だけで日本の家電メーカは勝てるでしょうか?
ブランド・エクイティとヘリテージ
製品がコモディティ化したので、製造コストの安い新興国に勝てない。日本のメーカが良く使う常套句です。果たしてそうでしょうか?食品や日用生活用品といった製品そのものでの差別化がしにくい業界でも、グローバルで優位に立つ日本企業も多くあります。日本の家電メーカも世界で多くのファンがいました。先進的、精密、小型、丈夫で壊れにくい、消費者に浸透した日本製品のブランド・エクイティを軽視して、直近の業績のみを追いかける経営が、日本の家電メーカを窮地に陥れています。競合相手のカタログスペックとプライスを下回るだけの製品開発ではすぐに新興国にキャッチアップされてしまいます。その企業が培ってきた思想や考え方が製品に表れ、それに共感して製品を選択する消費者を増やしていくことが、日本の家電メーカの生き残る道と考えます。また、日本メーカには過去の優れた製品たちがあります。自動車の世界では、過去の消えた車の名前が復活しています。家電の世界でも一世を風靡した製品、世界を変えた製品に敬意を表し、ヘリテージ家電として最新技術で開発したらどうでしょうか?70~80年代の日本の家電を単なるレトロ家電ではなく、ヘリテージとしてリデザインして発売したら売れると思うのですが。アイドルグループに宣伝させるより、よっぽど売れますよ。高齢化の進む日本市場では、消費者の懐古趣味も含めてうけると思うのですが。