「自分は営業に向いていない」とあきらめる前に【第3回】お客様のいう事はすべて正しい

少し時間が空いてすみません。これからは、営業職にとって一番大切なお客様とのコミュニケーションについて書いていきます。

先輩の机にあった置物に書かれた言葉

営業に異動になって、当時指導していただいた先輩の机の上に、小さな石のような置物があり、その石には、第1原則「顧客はいつも正しい」、第2原則「たとえ顧客が間違っていると思っても、第1原則を読み返せ」と書いてありました。海外のお土産だったらしく原文は英語で書かれていました。見た当時は、「三波春夫の(お客様は神様です)的なビジネス金言か。どこでも同じようなことを言うもんだ。」とあまり感動も共感もありませんでしたが、様々な業種での営業経験を積み重ねるうちに、私にとっては大切な言葉になりました。でもこの言葉、言葉通りにとらえると、三波春夫の言葉と同じく、今では違和感があるかもしれません。

スチュ-・レオナードというスーパー

さて、この言葉、後で調べてみると「スチュー・レオナード」というアメリカ・コネチカット州の有名なスーパーの経営ポリシーでした。

RULE1 「THE CUSTOMER IS ALWAYS RIGHT」(お客様は常に正しい)

RULE2 「IF THE CUSTOMER IS EVER WRONG REREAD RULE1」(お客様がもし間違っていたらルール1.を読み直しなさい)

Stewleonard社 HP(下の方にPolcyRockが掲載されています。この形の置物でした)

米ウォルマートや日本のイオンのような巨大チェーン店ではなく、4店舗しかない家族経営の地方のスーパーです。ところが、ポリシー通り常にお客様の要望を取り入れ、お客様を楽しませる仕掛けや良質な商品構成で、他のスーパーとは一線を画す高粗利率の経営を行い、世界中から多くの視察が訪れる有名なスーパーだそうです。HPには子供を楽しませる仕掛けや、豊富な試食があるとの事なので、さながらディズニーランドのようなお店のようです。

ルール1 お客様は常に正しいのか?

営業活動の中で、お客様から無理難題、時には理不尽な事を要求されることはよくあることです。そんな時「客なら何を言ってもいいのか?何でもいう事を聞けばいいのか?」という疑問もあると思います。お客様と営業は決して”王様と奴隷”の関係ではありません。「お客様が正しい」というのは、お客の言動や要望がすべて正しいという意味ではなく、「お客様がいなければ、そもそもビジネスが成り立たない。お客様の声を常に聴き、受け入れ、行動する」という事だと思っています。

ただ、お客様の中には、自分のストレス発散のため、意図的に貶めようとするクレーマーのようなお客様もたまにはいます。今回は触れませんが、本来は対等な商取引の場を、「お客様は神様」と金を払うほうが上だと立場の上下にすり替えてしまうお客様には、ケースバイケースでの対応が必要です。

ルール2 お客様が間違っていたら?

お客様の無理難題や要求を「お客様が間違っている」と感じたときには、それは自分の考えや、自分の会社の方針と異なっているからです。お客様がビジネスの中心であるならば、ルール1の戻り、なぜお客様が理不尽なことを言うのか?要望が受け入れられないのはなぜか?を再度考えるべきです。お客様にはお客様の都合があり、自分や自社のルールには合わせませんし、お客様の都合もどんどん変わっていきます。IT関係ですと、お客様の方が変化に敏感で、先進的な場合もありますし、ITをきっかけで経営を変えたいを思っているお客様も多いと思います。常に、自分が間違っていないか?という意識を持ち、無理難題の中に潜んでいるお客様の変化を読み取って、お客様との関係を適切なものにするのが営業の大きなミッションだと思います。

売ってやらないという特権

「お客様に買ってもらうのは大変だ」「これだけ契約しないと今月は目標未達だ」最初からこんな頭の中で、お客様と接していれば、お客様との関係も「お願いですから買ってください」という”王様と奴隷”の雰囲気になってきます。”王様と奴隷”の場合、王様からの言葉は命令になってしまい、コミュニケーションは成り立ちません。お客様と対等なパートナーとなるには、営業の”下から目線”を変える必要があります。幸い、営業には「こんな客には売ってやるものか」という特権があります。誤解が無いように言えば、実際に無理難題を言うお客様に売らないわけではありませんし、横柄にふるまったり、威張れと言ってるわけではありません。あくまで、”売ってやらない特権”が営業にあるという意識を持って、お客様に接するだけで、お客様と対等なスタンスでコミュニケーションを深めることができると思います。

お客様は常に世の中のトレンドを勉強し、他社と比較しています。お客様の声にはコンサルティングの報告と同じくらいの価値があります。お客様とお互いに信頼した関係で、コミュニケーションが取れる営業の意識を大事にしてください。

「お客様は神様です」の正しい意味

少し外れますが、三波春夫の「お客様は神様です」も決して、”お客様がお金を払ってくれるから、お客様を神様のように扱う”ではありません。この言葉が間違った意味で広まってしまったのも、お客様側の”買ってやる”意識が根深くあるんでしょうね。

「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払って、心をまっさらにしなければ完璧な藝をお見せすることはできないのです。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。だからお客様は絶対者、神様なのです」

出典:三波春夫オフィシャルサイト 「お客様は神様です」について

営業活動で、お客様から「お客様は神様だろ」と言われたら、正しい理由を教えてあげましょう(笑)

 

次回に続く

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。