「自分は営業に向いていない」とあきらめる前に【第1回】営業職を考えてみる

会社生活のほとんどを、営業と営業に関わる企画/戦略に関わってきた経験をもとに、営業についての話をしたいと思います。とはいっても、「トップセールスマンがやっている10の事」とか「このテクニックでバンバン受注が獲れる!」みたいなものではありません。私は、営業のスキルやノウハウは定型化できないと考えています。100人の営業マンがいれば、少なくとも100通り以上の営業手法があります。飛び込みの営業活動もあれば、特定のお客様だけ対応している営業もいるでしょう。お客様との相性や、扱う製品や市場でも、営業手法は異なってきます。とはいえ、やはり成功している営業マンは持っているスキルは様々でも、共通した「心得」「心構え」を持っていると感じます。『営業部署に配属/転属されたけど自分にできるのか?』『営業をやってるけど成績が上がらない。もうやめたい』と思っている方々に少しでも参考になればと思います。

■営業の仕事

営業の仕事は、製品や商品を売ることが唯一無二のミッションです。すべての営業活動は、適正な価格でお客様と合意し、契約書や発注書に判を押していただくことがゴールになります。当然のことながら、ゴールまでの道のりにはエベレスト登頂ぐらいの困難さもあれば、宝くじに当たるぐらいのラッキーなケースもあるでしょう。営業の仕事は(売ること)ですが、それは同時に(お客様に買っていただくこと)ですので、どうしたら買っていただけるかを考え、それを実行するのが、営業の仕事といえます。お客様へのアプローチ~契約までには、様々なプロセスとそれを成し遂げるスキルが必要になってきます。

■営業に向いている人

営業に向いている人、営業で成功している人の一般的なイメージは「明るい」「人当たりがいい」「しゃべりが上手」といったところでしょうか。確かに会話能力が必要である職種だとは思いますが、営業は会話能力だけで勝負が決まるものではありません。朴訥な人柄でも、お客様に信頼され優秀な成績を上げている人もいればや、明るくて話題が豊富な営業でも成績はさっぱりというような人もいます。

「押しが強い」「交渉力がある」というのも、営業に向いていると良くいわれますが、イマドキは「押し」と「情熱」だけでは、お客様から鬱陶しがられ、契約はいただけないでしょう。こういった営業のステレオタイプなイメージは根強く残ってますし、私が入社した1991年の頃は、義理人情に厚く、熱く営業論を語る情熱的な先輩が多く、モノを売るということが、営業の精神論で語られる時代でした。お客様に「必要ない」といわれても食い下がり、競合会社を出し抜いて受注を取る。鋼の精神力を持ってないと、営業はできないと思われていましたし、当時の上長や先輩にもそういう空気の下で教育されました。

■営業は体力勝負

実際、私が入社した当時は大学の体育会出身者、スポーツ系の部活やサークルで活躍して会社に就職した人は、強靭な精神を支える体力があるということからか、営業職に配属になるケースが多かった気がします。言葉は悪いですが(勉強はできなくても、体力と精神力があれば営業には向いてる)ということだったような気がします。

私も大学時代に体育会(といっても、ライフル射撃という超マイナースポーツ)の主将をやっていましたが、入社前に『配属は絶対営業だろう』と思っていました。ところが、私自身も営業職を希望してましたにも拘らず、実際には工場の総務に配属されました。入社前の適性検査で向いているという判断だったらしいのですが、納得せず会社に掛け合い、工場の業績低迷による配置転換というラッキー(?)もあって、入社後2年ほどで営業に転属となりました。工場の9時~5時という規則正しい勤務とは異なり、新規開拓の外回りや、打ち合わせ、納入立ち合いや接待等々で不規則な勤務時間となり、確かに体力勝負であるなと感じたこともありました。

ただ仕事に慣れてしまえば、不規則な中でも規則性を見つけ(休む時は休む)と自分でメリハリを付けた時間の使い方ができるようになり、楽になってきました。私自身も強靭な体力があるわけではありませんが、限られた体力を有効に使うよう心がければ、他の職種と比較しても、体力が必要というわけではありません。

こうしてみると、営業にはだれでもなれますし、どんな方でも向いていると思います。会社が営利目的である以上、総務や管理といったスタッフのような職種でも、いつ営業になっても良いように、製品、サービスを売り込む営業力はビジネススキルとしてあった方が良いとも思います。

一方、営業職は避けられがちな職種でもあります。営業職への転属が懲罰人事的に行われるケースもあります。理由の一つは営業の避けて通れない宿命でもある【仕事の成果が、受注額という明確な数字で表れる】ということでしょう。次回はこの点についてお話ししたいと思います。

 

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